本研究の目的は、わが国におけるテレワークの現状を、実証的手法によって総合的に把握しようとするものであった。その目的にそって計画段階においては、テレワークとしてある程度の実態を有する在宅勤務・モバイルワーク・在宅ワークの各労働形態に従事する人びとを対象とした調査活動を立案した。 本助成研究期間中に、在宅勤務およびモバイルワークの従事者に関してはインタビュー調査を、在宅ワーク従事者に対してはインタビューとアンケート調査を実施することができた。在宅勤務とモバイルワークについては、充分な数の回答者を得られたとはいい難い。しかし、いまだ先行する調査研究の蓄積が極めて限られる現状にかんがみれば、ケースは少数であっても、一定の資料価値をもつ結果を得られたと考えられる。在宅ワークに関しては、既存研究が比較的豊富である。そのため、過去に行った在宅ワーカー調査の回答者を対象として、パネル調査を実施した。経時的調査研究の蓄積が少ない国内のテレワーク研究においては、この調査結果もまた一定の価値をもつものと思われる。 またこれらの調査結果の分析から「労働の不可視化」と「限定的裁量権」が労働形態としてのテレワークがもつ基本的な特性であることを明らかにし、それらの特性がテレワークをめぐる現状と可能性を規定している点に関して、論理的な考察を展開することが可能となった。 なお本助成研究のおもな成果を、『テレワークの社会学的研究』および『テレワーク「未来型労働」の現実』の二著として公刊した。
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