研究課題
基盤研究(C)
本研究では、台湾ならびに沖縄のハンセン病療養所におけるハンセン病当事者の個人史と当該社会におけるハンセン病の歴史性を社会学的に解読することを通じて、「台湾」あるいは「沖縄」という社会的-地政的位置においていかにして差別や抑圧の構造が作り出されてきたのか、あるいはその権力構造の只中でハンセン病当事者たちはどのように抗ってきたのかを明らかにすることを目的とする。言うなれば、膨大な歴史的史資料を参考にしつつ、ハンセン病当事者たちの生活世界における個人史を、つまりはこれまで証言されてこなかった《歴史》を読み解くことを最大のねらいとした研究である。本研究の学術的な特色としては、(1)台湾あるいは沖縄のハンセン病の歴史について照準化していること、(2)台湾と沖縄の両者の療養所のあいだの歴史的・文化的・社会的な関係に着眼した上で、その歴史的-地政的文脈を社会学的に明らかにしようと試みていること、(3)そして台湾と沖縄のハンセン病当事者の個人史の変容を歴史的文脈と照らし合わせつつ分析する試みであることの3点が挙げられる。本年度の平成17年度は、はじめにハンセン病問題に関連する資料分析を中心に進め、次いで広範な先行諸研究の文献研究を行った。その上で、こうした文献レビュー作業を下地に「ハンセン病をめぐる年表」を作成し、熊本学園大学付属社会福祉研究所発行『社会福祉研究所報』34号に掲載した。今後はいくつかの学会等にて平成17年8月下旬に実施した台湾楽生園での調査報告を発表すると同時に、学会誌への投稿を行う予定である。調査では台湾楽生院の入所者・職員ならびに台湾のハンセン病関係者(マカイ病院関係者、楽山療養所関係者)にインテンシブなインタビューを実施し、多角的な分析方法によって明らかにした。また、台湾ハンセン病史に関する膨大な資料を渉猟し、データベース化の作業を進めている。
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(社会福祉研究所報)熊本学園大学付属 第34号
ページ: 150-310
社会学評論(日本社会学会発行) 221号(Vol.56,No.1)
ページ: 214-215
家族研究年報(家族問題研究会発行) 30号
ページ: 17-34
部落解放研究くまもと(熊本県部落解放研究会発行) 45号
ページ: 1-35