研究概要 |
1.成果 本年は、以下の研究レビューを1本、研究会を1回開催した。 1)岡田英己子(2006) 優生学と障害の歴史研究の動向-ドイツ・ドイツ語圏と日本との国際比較の視点から.特殊教育学研究,44(3),179-190. 2)科研報告の中間研究会 テーマ:「平塚らいてうの優生思想の再考-大澤・永井のドイツ留学と生理学研究の系譜を通して」日時:2006年12月20日13時〜16時,場所:首都大学東京5号館241室 2.作業経緯 1)国内:2年度目も1年度目と同様に、平塚らいてうの優生思想研究に時間をかけた。史資料分析を続行し、調査対象とした全項目にわたって、年表・資料解題を作成した。7割程度までできている。新規項目として平成18年度に追加したのは、断種法制定で主導権を握っていた永井潜の系列に属する東大医学部卒の研究者数名の経歴調査である。厚生事業期から戦後までを追った。これによって日本断種法の制定過程における権力の構造が見えやすくなった。 2)ドイツ:永井のドイツ留学時代の調査では、彼の住まいは発見できたが、ゲッチンゲン大学には永井在学中の個人記録は残っていなかった。東大医学部生理学教室の他の研究者の研究交流に関しても、論文・辞典以外で資料は見出せなかった。 2年度目に戦後の日独比較の予備調査も開始した。今回の科研期間の後半で優先させたかった調査先であった。戦後に設立された障害者団体であるので、聴取はさほど難しくないと当初は考えていた。が、1950年代に当該団体の設立準備に尽力する理事の一人(地位・経歴から見て彼が中心者と推測される)が、ナチ断種法・安楽死計画に関与していたことが判明した。彼は後に警察司法の訊問を受け、その直後に事故死している。そのために現時点での関係者の聴取は難航している。
|