平成17年度は、年金および所得保障制度に関する日本および海外の文献を収集し検討を行い、戦後の社会保障制度の前提に置かれてきた家族モデルの見直し・複線的なライフモデルの構築作業が必要となっていることを確認し、家族多様化の時代における社会保障制度改革のための前提となる複数の「家族モデル」の設定のための条件を整理することとした。これまで、検討した主要な点は下記の通りである。 1.これまでの「男性稼得者・専業主婦モデル」は今後も存在するモデルであると考えているが、「共稼ぎモデル」の増加や、離婚の増加によって、老後の生活保障を世帯単位で行うことについて限界が生じている。 2.近年の第三号被保険者をめぐる「公平性」をめぐる議論は、特定の「共稼ぎモデル」と「男性稼得者・専業主婦モデル」との単純な比較にすぎない場合が多い。特に、「共稼ぎモデル」について、正規・非正規労働など雇用の状況や賃金水準などによってさらに細分化された分析・検討が必要である。 3.平成16年度の年金改正の結果、離婚時の年金分割制度が導入されたが、離婚のタイミングによって、年金受給額が左右されることになっている。その後のライフプランなどと合わせて、老後生活保障について、いくつかのモデルを構築することが必要である。また、「未婚単身者モデル」「離別単身者モデル」など「単身者モデル」のニーズの差異にも注目する必要がある。 4.上記2とも関連するが、年金問題をめぐる社会的な議論においては、こういった「多様化する家族」と制度が前提とする家族モデルとの差異から生じる問題点、ライフステージをトータルに把握した視点から詳しく説明されておらず、これらが、公的年金制度について一般国民に一面的な「不公平論」を認識させている一因となっている。特に、制度の説明、年金教育において新たな工夫が必要となっている。
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