本研究では、介護施設におけるリスクマネジメントシステムの構築および実践課題を明らかにし、リスクマネジメント実践に向けたガイドブックを作成することをねらいとしている。 そのため、アメリカのナーシングホームにおけるリスクマネジメントの実践に関する文献研究を行い、幾つかの文献をレビューを行った。なかでも、アメリカ医療リスクマネジメント協会が発行した「医療施設のためのリスクマネジメントハンドブック」からは、リスクマネージャーの業務範囲を考える上で、幾つかの有益な示唆が得られた。また、あらためてわが国の介護施設におけるリスクマネジメントに関する先行研究のレビューも行った。 しかし、本年度予定していた事故報告書・ヒヤリハット報告書の収集を予定していたが、施設側から協力が得られず、必ずしも十分に報告書の収集できなかった。リスクマネジメント業務に関する聞き取り調査に協力していただけた施設職員を中心に定期的な研究会を実施し、幾つかの事故事例について検討を重ねた。これらの聞き取り調査を通じ、リスクマネジメントに関わる施設職員が考える事故防止の注意義務の内容を類別していくことを考えている。 また、幾つかの施設を訪問調査し、リスクマネージャーの業務の範囲についても聞き取り調査を行った。これをもとに大阪府下の介護施設約300施設を対象にリスクマネジメントに関する実態調査を行った。現在の段階で、リスクマネジメントの取り組み状況および業務課題が明らかになった。回答が得られた施設の約八割がリスクマネジメントの取り組みをしていると回答があった。また、リスクマネジメント委員会を設置しリスクマネージャーを設置している施設とそれ以外の施設では、リスクマネジメントの実践状況に大きな違いが確認された。
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