この報告書は、I)日本におけるナーシングホームのリスクマネジメントの取り組みおよび介護事故に対する裁判の動向について概述し、II)大阪府におけるナーシングホームの取り組み状況と実践課題を明らかにし、III)あるナーシングホームにおいて提出された事故報告書の分析を行った。 2000年介護保険法が施行されて以来、わが国のナーシングホームにおいてもリスクマネジメントの取り組みが始まった。現在は、大部分のナーシングホームが、リスクマネジメントの活動を行っているが、いまだ十分に機能しているとはいいがたい。この研究では、大阪府下のナーシングホームを対象にアンケート調査を行い、リスクマネージャーが直面している具体的な実践課題を考察した。また、あるナーシングホームにおいて提出された事故報告書から事故パターンを分析し、転倒・転落事故を中心に職員のヒューマンエラーについて考察した。 最近の裁判の動向については、利用者の状況から事故を予測できる幾つかの事案に対しては、原告である本人あるいは家族の請求が認容されており、具体的に事故を回避するべき対応に誤りがあったとする判決が出されている。多くが、介護保険が始まる以前の事故であり、事故予防の取り組みが十分でなかったことが読み取れた。 大阪府下の特別養護老人ホームについてリスクマネジメントの取り組み状況について調査した。調査からは、多くの特別養護老人ホームにおいて、リスクマネジメントの取り組みは確認できたが、事故回避のためのPDCAの改善のサイクルが回っていないことが明らかになった。 ある特別養護老人ホームの事故報告害を分析し、事故の概要、転倒・転落事故についてのパターンを分析した。パターンごとに職員のヒューマンエラーの構造を検討した。
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