研究課題
基盤研究(C)
高齢社会とは、高齢者が社会のなかで存在感を強めていく社会であり、多様な社会的な役割が高齢者に構造的に提供されることによって、高齢者の社会的排除状態が解消されなければ成立し得ない社会である。従来の単なる就労継続から、就労も含む多様な社会参加活動への参加を通じて高齢者の社会的役割を維持することを目指す社会である。本研究は、農村地域に居住する高齢者の社会組織、社会集団への参加状況を西日本地域(中国および北部九州地域)において実証的に分析し、農村型のアクティブ・エイジング実現のための基本的条件を明らかにすることを目的とした。そのため農村高齢者の社会参加活動に関する社会調査を実施した(実査時期:2007年10月30日〜11月下旬、調査方法:郵送法、調査対象:大分県日田市中津江村地区20歳以上居住者、調査対象者数:609人(2007年10月選挙人名簿登載20歳以上)、抽出方法:無作為抽出、回収数(回収率):410人(67.3%))。その結果、過疎高齢者は農業という継続性の高い活動を持っていること(農業の非経済的側面の拡大)、別居子からのソーシャルサポートの存在、世帯単位での集落維持活動への参加(女性独居高齢者の逆説的な高い生きがい状況)、集団参加の蓄積(年齢階梯集団の役割)といった特徴を持っていることが明らかとなった。過疎高齢者の社会的役割は、生活に根差した活動に基礎をおく形で維持されてきた。都市高齢者と比較して有利な点でもあったが、必ずしも楽観を許さない状況がひろがりつつある。農業や年齢階梯集団との関係のなかで形作られてきた、現在の過疎高齢者の相対的な満足感、集団参加の蓄積を、向老層やそれに続く青年層に対して同様に期待するには無理がある。過疎高齢者の生活は、現状はなんとか維持されているが、今後中長期的に一層厳しくなることが予想されるのである。
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Masae Tsutsumi, Sadao Tokuno, Tsutomu Yamamoto "Sociology from the Rural Areas", Gakubunsha
ページ: 119-142