本研究の一年目は、まず、本研究の推進のため、長野市、市川市の行政及び高齢者福祉従事者、研究者等で構成される研究委員会を設置し、研究内容について助言を得られる体制を構築した。そして、高齢者虐待防止を先駆的に取り組んでいる金沢市、大府市等への訪問調査、高齢者虐待電話相談の相談員へのインタビュー調査を実施し、予防へのアイデアを聴取した。さらに、保健・医療・福祉関係者と高齢者へフォーカスグループインタビュー調査を実施し、虐待に出合わないために予防できること等についてアイデアを得た。また、高齢者に対する生活不安に関する配票調査を実施し、予防プログラム策定の参考とした。以上の各種調査データを基に、高齢者虐待を高齢者自身の力で防ぐために必要な支援のアイデアを抽出すると、(1)経済的基盤、(2)自分の意思や姿勢、(3)健康であること、(4)人間関係(家族との関係、近隣との関係、他人との関係、地域との関係)、(5)制度やサービスの知識、(6)虐待の知識となった。これらを予防プログラムの主軸に位置づけ、予防に必要なプログラムを具現化し、モデルプログラム(案)を策定した。 二年目は、前年度策定された高齢者虐待予防モデルプログラム(案)の試行的実施と評価を、前年度同様に研究委員会を年4回開催しながら実施し、最終的なプログラムを策定することを目指して進めてきた。モデルプログラム案の試行と効果測定を、長野県長野市(8月)、東京都三鷹市(10月)、千葉県市川市(11月)の計3カ所で実施した。プログラムの効果測定・評価は、受講者評価、第三者評価(保健・医療・福祉専門職)の各視点から行い、順次、修正や改善を行った。そして、プログラムの改良とマニュアル化を検討委員会の助言を得ながら進め、最終的に高齢者へのエンパワメントによる虐待予防プログラムを提示するに至った。
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