フィリピン人女性が日本人と結婚して日本で生活する上で、日本語理解能力(話す、聞く、読む、書く)が不十分である実態から家庭内でのコミュニケーションや社会適応を阻害している。 離婚もしくは離別の理由としては、夫が仕事をしない、別の女性と付き合う、暴力を振るうなどが上げられており、日本人の夫側に深刻な問題があるといえる。離婚後の子どもの養育については、フィリピン人の母親が養育することが一般的である。 日本においては、フィリピン人の母親には自立した生活に対する意志があり、自立生活の準備として生活保護、児童扶養手当など公的制度などを活用している。しかし、職場で同じ仕事をしている日本人従業員と異なる条件で雇用されている状況について不公正さを感じていても、知識や方法が分からないため解決するまでには至らない状況があり、フィリピン語による情報提供および相談対応が求められる。 フィリピンにおいては、フィリピン人女性が日本大使館に相談に行っても、支援はまったく提供されない状況の中で、出稼ぎ女性を支援する民間団体から支援を受けながら、自助グループを組織して自主的な活動を行っている。しかし、民間団体は財政的、組織的限界もあり、母子家庭の課題にすべて応えられるわけではない。 毎年、日本人とフィリピン人の婚姻件数と同様に離婚件数も一定数あることから、異文化を背景とした家庭を形成していけるような包括的な社会的支援の枠組みを研究したい。まず、フィリピンにおける渡航前オリエンテーションを充実させること、さらに、来日してから住民となる市町村での新しい生活に関するオリエンテーションおよび継続した異文化適応支援の形成である。また、離婚を決定したフィリピン人母子家庭は脆弱性が高いことから、自立した生活や「子どもの権利」が保障されるよう両国の官民の協力による法制度の充実及び支援体制の構築は必須である。
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