研究概要 |
本年度の主たる課題は,行政,地域住民,関係諸団体等と課題の共有を図るために,外国人労働者を当事者として位置づけた上で,生活課題に対する当事者認識を検証すると共に,当事者としての外国人労働者の生活実態と意識についてのアンケート調査を実施しすることであった。4月から7月にかけて調査仮設,分析枠組みの検討を行い日本語での調査票を完成させた後,調査対象地の当事者団体にその翻訳を依頼した。これらと同時に,受け入れ側の住民の認識を把握するために調査対象地の自治会役員などに対するヒアリングを行った。 翻訳の作業は7月下旬に依頼を行ったが社会福祉諸制度や行政用語も用いており翻訳者とのやり取りをして確認をしつつ進めることが必要であったため,9月上旬に予定した実査を延期した。翻訳に費やす時間が予定より大幅に長引いたため,調査票回収締め切りは3月下旬を目途に実施し,年度内は調査票の配布および回収,点検にとどまっている。このためデータのインプット,分析などは次年度に送らざるを得なかった。次年度はこれらのデータ分析を行い,生活課題の解決に向けた活動につなげたい。 調査自体は予定より遅れたが,調査票の翻訳や調査のための打ち合わせ自体をアクション調査という観点から位置づけるならば,当事者が外国籍住民として抱える生活ニーズの背景にある諸課題を言語化し認識する機会を提供しえたものと考えられ,それ自体が意義を持つものといえる。このことは当事者団体による調査実施過程における積極的協力につながり,調査票配布,回収への協働作業として結実している。 また主たる調査対象である集住自治体型事例に対して,圏域分散型集住事例として神奈川県での踏査を行った。オールドカマーへの施策の蓄積をもつ自治体のあり方,社会的理解への多様なチャンネルの存在などの点で,その生活支援のあり方に独自性を見出した。今後もこの観点から比較検討を行っていく。
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