1.2008年3月〜4月にかけて実施した「日系ブラジル人の生活と福祉に関する実態調査」の調査結果から調査対象地での日系ブラジル人の家族を伴った定住化傾向が明らかになった。しかし、その生活は雇用と居住の不安定さに基づく「不安定定住」であり、不十分な教育条件や医療体制等の制度的課題だけでなく、社会関係の貧困も明らかとなった。現状では、その生活支援は民間団体の支援が中心である。人権という観点からの生活支援の論理の確立が課題となっている。成果については、第56回日本社会福祉学会(2008年10月12日、岡山県立大学)で連携研究者である中尾友紀(椙山女学園大学)が「日本の公的年金制度にみる『ニューカマー』排除構造の整理」、大井智香子が(中部学院大学短期大学部)、朝倉美江が「『定住化』する日系ブラジル人の生活実態と地域福祉政策・活動の展望(1)(2)」、尾里育士が(中部学院大学短期大学部)「外国住民の子育て不安と解決の手だて」として報告を行った。また分析結果の一部について三本松が「複合的生活課題と地域福祉」(『学術の動向』13巻11号)および「移住生活者の福祉と生活支援」(『法律のひろば』61号)を執筆した。 2.8月9日から13日にかけて韓国における多文化共生政策に関わる調査を行った。ソウル特別市九老区、京畿道安山市、忠清南道天安市でNPO団体や社会福祉館から聞き取りを行った。韓国では外国人労働者だけではなく結婚移民女性が急増し、多文化家族政策が移民政策の1つの柱であること、支援では民間団体が大きな役割を果たしていることなどが明らかになった。調査報告は『立教大学コミュニティ福祉学部紀要』11号にまとめた。
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