中山間地における定住を可能にするための福祉経営のあり方を、山形県最上町を事例として研究を進めた。研究の初年度にあたる平成17年度は、(1)最上町の地域福祉計画の策定過程に関するアクションリサーチ、(2)条件不利地域における定住と福祉の実態調査、の2つの視点から研究を進めた。 最上町の地域福祉計画の策定過程については、平成17年度の1年間の予定で進められた地域福祉計画の策定過程に参加しながら、住民の生活実態の把握とその対応方法の検討を行った。また、計画の評価指標として、ソーシャル・キャピタルの指標を設定し、計画の実施によってソーシャル・キャピタルの指数にどのような変化が生じるかをもって、政策評価を行うという方法を検討した。それを実証するために、計画の実施前の時点での指数の把握を目的として、最上町の20歳以上の住民全員を対象にアンケート調査を実施した。 また、条件不利地域における実態調査として、中山間地域の一つである高知県土佐町および香北町においてヒアリングを実施した。さらに、中山間地域と同様に条件不利地域として位置づけられる離島の調査として、沖縄県竹富町(八重山諸島)における福祉の実態についてのヒアリングを実施した。これらを通して、(1)条件不利地域の福祉システムの形成においては、住民相互の支援が重要な位置を占めていること、(2)人材の不足が指摘される地域において、ケアマネージャー、保健師、ヘルパー、民生委員の連携による支援体制が鍵をにぎっていること、(3)介護保険制度をはじめとする国レベルでの政策を条件不利地域に見合うかたちに修正する必要があること、が明らかとなった。
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