研究1では、AIDS教育がHIV対処行動意思とPWH/A(HIV感染者・AIDS患者の総称)への態度に及ぼす影響を検討するために、241名の大学生を対象者に質問紙調査を実施し、197名から有効回答を得た。「3種類のAIDS教育と性別→3種類のAIDS知識→2種類の認知要因と恐怖感情→3種類のHIV対処行動意思と2種類のPWH/Aへの態度」という一連の影響過程を仮定する「AIDS教育の影響過程モデル」を新たに提案した。その結果、(1)HIV対処行動意思への影響に関しては、認知要因と恐怖感情からの影響はみられず、AIDS知識からの直接的な影響がみられるにとどまった。(2)PWH/Aへの態度への影響に関しては、各AIDS教育が当該のAIDS知識を高め、その知識によってHIV感染に対する認知と恐怖感情が形成され、この認知と恐怖感情がPWH/Aへの態度に影響を及ぼしていることが解明された。上記データを利用した研究2-1と研究2-2では、それぞれ防護動機理論と集合的防護動機モデルの枠組みから、AIDS教育がHIV対処行動意思に及ぼす影響を検討した。「3種類のAIDS教育と性別→防護動機理論の仮定する6種類の認知要因あるいは集合的防護動機モデルの仮定する8種類の認知要因→3種類のHIV対処行動意思」という影響過程モデルに基づいて分析した結果、モデルと一致する方向での結果は、エイズ検査受検意思でのみ部分的に存在することが明らかとなった。同様に、上記データを利用した研究2-3では、防護動機理論の枠組みから、AIDS教育がHIV感染への不適応的対処反応に及ぼす影響を検討した。「3種類のAIDS教育と性別→防護動機理論の仮定する6種類の認知要因→4種類のHIV感染への不適応的対処反応」という影響過程モデルに基づいて分析した結果、すべての不適応的対処反応についてモデルと概ね一致する方向での結果が得られた。
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