研究では、既成のエイズ教育用印刷教材の効果を、統制群法を用いた事後測定計画に基づき実験的に検討した。印刷教材に接した実験群は、印刷教材に接しなかった統制群に比べ、エイズに対する主観的知識と関心度が有意に増加し、コンドーム使用の効果性認知が有意に高まり、PWH/A(感染者・患者の総称)に対する態度が有意に肯定的になった。しかし、HIV抗体検査の効果性認知は予想に反して低下しており、印刷教材の効果は全てが仮説と一致するものでなかったし、効果の出現率も低いことから、印刷教材の効果には限界があることが示唆された。さらに、HIV対処行動意思に対する理論・モデルの説明力が印刷教材に接することによって増加するかどうかを検討した。しかし、印刷教材は、理論・モデルの説明力を高めず、集合的防護動機モデルの説明力が防護動機理論の説明力よりも優れていることが示されるにとどまった。研究5では、エイズキャンペーンの効果を、統制群法を用いた事前-事後測定計画に基づくフィールド実験によって検討した。エイズキャンペーンに参加した実験群は、不参加の統制群に比べ、コンドーム使用の規範認知を増加させ、PWH/Aとの共生行動のコスト認知を減少させ、PWH/Aとの共生行動の報酬認知を増加させ、PWH/Aに対する態度を肯定的な方向に変化させ、PWH/Aとの共生行動意思を高めることが分かった。エイズキャンペーンの効果は必ずしも十分ではないが、PWH/Aとの共生に関する意識の改善に役立つことが示唆された。研究6として、研究2の発展的研究を実施した。研究2の3段階モデル(エイズ情報→認知要因→HIV対処行動意思)よりも、第2段階にエイズ知識を導入する4段階モデルの方が、HIV対処行動意思に対するモデルの説明力が増加することが示された。
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