(研究1)異なる文化背景を持つ人との効果的な相互作用能力としての異文化間コミュニケーション能力(ICC)を、効果的なアイデンティティの制御という側面から理論化したTing-Toomeyのアイデンティティ制御理論に基づいて、ICCに必要とされる「コミュニケーション資源」を測定する尺度を作成し、日米の大学生を対象とする調査をおこなった。その結果、「感情の表出をコントロールする程度」と「感情と認知の一致の程度」の2つについては、日本人の方が有意に高く、「マインドフルネス」「再カテゴリー化傾向」「再フレーミング化の傾向」「自己志向的感情の表出傾向」「個人的自尊心のコントロール傾向」「自己呈示行動のモニタリング傾向」の6つについては、逆にアメリカ人の方が有意に高い傾向を示した。この他、Ting-Toomeyが主張する個人/集団主義や文化的自己観などによる「感情の表出」や「自尊感情」などに関する文化差について支持する結果が得られた。 (研究2)「アメリカの日本人補習校」「国際科高校」「工業・普通科高校」に在籍する日本人高校生を対象とする調査をおこない、異文化滞在経験や国際理解に関する教育がICCに与える影響について検証をおこなった。その結果、全体として学校種間による違いは有意傾向を示したものの、個別のコミュニケーション資源については、10の資源のうち3つについてのみ国際科高校の学生が有意に高い傾向を示した。具体的には、「マインドフルネス」については補習校の学生よりも有意に高い傾向を示し、「再フレーミング化の傾向」および「自己呈示行動のモニタリング傾向」については、他の2つの学校種の学生よりも有意に高い傾向を示した。また、Ting-Toomeyが主張する「コミュニケーションへの動機」「個人的自尊心」「集団的自尊心」がミュニケーション資源に与える影響については、明確な結果は得られなかった。
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