本研究では、社会的問題としてクローズアップされている偏見、そしてその背景にあるステレオタイピングの問題を、集団間関係から検討することを目的とした。今回、集団間関係の要因として集団間の類似性、協同作業における相互依存性の相違を取り上げ、内集団・外集団の集団認識、特にステレオタイピングにどのような影響を与えるか検討した。さらに現実の合併企業で複数の集団が上位レベルで1つの集団になる過程における上位集団へのアイデンティティの形成、旧外集団への偏見、ステレオタイピングについて検討を行った。 まず集団間の類似性がステレオタイピングに与える影響を検討するため、内集団、外集団の変動性知覚および集団間評価の方向性について実験的検討を行った。その結果、集団間の類似性が低いほど、外集団の変動性を内集団よりも小さく知覚し、外集団均質化効果が認められた。この結果から、内集団との違いが大きな集団ほどステレオタイピングされやすいことが示唆された。 次に複数の集団が上位レベルで1つの集団になるとき(認知的なものも含む)、集団間の相互依存関係や課題の成果が、集団認識、集団間バイアスに与える影響について検討した。その結果、相補的な相互依存関係の場合、成果が成功、失敗にかかわらず、内集団、外集団に対する評価は同程度に高く、集団間のバイアスはみられなかった。しかし、相補的でない相互依存関係の場合、失敗すると内集団と外集団の評価に差がみられ、内集団ひいきが認められ、集団の相互依存関係の効果が示唆された。 さらに実際の合併企業における調査では、旧集団との結びつき、旧集団へのアイデンティティが新しい組織である上位集団へのアイデンティティの形成にどのような影響を与えているのか検討した。 これらの研究に関して日本社会心理学会第47回大会において発表を行った。
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