研究課題
基盤研究(C)
本研究では、直下型地震に代表される大規模自然災害発生時に生じる、住民間、住民行政問、行政間の様々な認知ギャップについて、現地調査等から分析を行った。従来、災害研究は、臨床心理学からの心のケアが中心で、必ずしも社会心理学からの分析は十分ではなかった。また行政学、公共政策の視点からの研究も、ほとんど皆無である。社会心理学や行政学からの災害研究に、道を開いた点に、本研究の重要性がある。具体的な成果としては、行政と住民間で、災害発生時、災害復興時の状況認識には大きな差異があり、それが住民、行政間の関係に緊張感をもたらす場合があること。また多くの住民が考える行政という認識には、国、都道府県、市町村の行政がそれぞれ権限を分担しており、権限内で出来ることと出来ないことがあるという認識が欠落しており、それがやはり行政に対する不満を募らせる原因になっている。一方、行政間では、現在国の権限強化が行われており、その結果災害現場での国の現地対策本部と、市町村の権限争いが生じる事例が見られる。また警察にも、災害救助の責任が法律上生じることから、災害現場で消防と警察の権限争いが生じる場合も見られる。行政機関間の連携を今後強化する上で、セクショナリズム等にも配慮した役割分担の明確化が求められている。また広域行政で消防防災行政を行っている地域の中には、消防防災事務を広域行政組織に丸投げしてしまう市町村がある。その中に更に消防団の管理も含まれていると、市町村はいざという場合の実働部隊がなくなり、何も出来なくなる。自分の事務から消防防災が外れると、消防防災責任が課されている二との認識も希薄になる傾向が行政に見られる点等を明らかにした。
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