研究概要 |
昨年度に続き、小学校3校と中学校1校の児童・生徒に対して継続的なデータの収集を行った。具体的に述べると、1学期の後半の7月と3学期の後半の2月から3月にかけての2回にわたる質問紙調査を行った。小学校の対象者では今回新たに3年生が加わった。また、小学校の1校のほとんど全員が進学する中学校の1年生を対象に7月に追跡調査を行った。これにより約1,800人のデータを収集したことになる。 この研究の結果の一部分を昨年の日本教育心理学会において報告した。そこでは、学習動機の二つの志向性、つまり熟達志向性と遂行志向性の発達について横断的なデータから分析した。内外の研究では両者の志向性はマイナスの相関関係にあるか、無関係という知見が多いが、この研究のデータでは両者はプラスの関係にあった。また、発達的な傾向性としては、熟達傾向については小学校の3年生から徐々に下降傾向が見られ、遂行傾向では中学校に入り増加傾向が見られた。学校適応に関しては、中学校になると不適応的な傾向がますことが知られているが、このデータではそうした事実は認められなかった。これは、その後でT2(第2回の調査)で新たにもう一つの中学校を加えたが、その1年生についてのデータにおいてもそうであった。学習動機の熟達志向性と学校適応との関連を見ると、適応の良好なこどもほど熟達志向性が高かった。 T2のデータに基づき、特に小学校の6年生から中学校の1年生にかけての安定性と変化に着目して検討した。動機づけの志向性においても、学校適応についても他の学年間の移行とくらべて小6から中1への変化が大きいと言うことはなかった。このことより、このサンプルに関しては小学校から中学校への移行はおおむね良好に進むことが多いことが示唆された。この後のT3(第3回調査)のデータを含めた縦断的な分析の結果の一部分については、今年の日本教育心理学会において発表の予定である。
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