研究概要 |
今年度はこれまで3回の調査データが小学校1校の3,4,5,6年生と中学校1校の1,2,3年生について第4回目の調査(T4: Time4)を行った。これにより、小学校6年生の年度末から中学校の1年生への学校間移行についてのデータは2つのコホートから得ることができた。つまり、最初の調査(T1)と2回目の調査(T2)と3回目の調査(T3)と今回の調査(T4)である。そしてこの2つのコホートによるデータは、最初のコホート(T1で6年生)の結果について2つめのコホート(T3で6年生)によって交差妥当性(cross-validity)を調べるためのものであるとともに、最初のコホートでは3月から7月と比較的早い時期であるのに対して、2つめのコホートでは11月と入学後半年少したった時点での調査であり、中学校での生活の期間の長さの影響についても評価できるような研究の方法をとった。 データの総数は約2,000にも達しており、変数の数は実に500にもおよび、詳細な分析はさらに時間を要するが、その一部分については昨年の日本教育心理学会第49回総会(文教大学)において発表した。その内容について要約すると次の通りである。 小学校から中学校にかけての学校適応について、学校適応に関する3因子(学級の中の居場所感、仲間からの期待、学習適応)を従属変数に、学年と性別を独立変数に分散分析を行った。なお、分析はT1とT2のデータについておのおの行った。第1因子の学級の中の居場所感ではT1とT2の双方のデータで学年と性別の主効果はともになかったが、第2因子の仲間からの期待では学年の主効果のみが有意であり、全体として中学生>小学生であった。また、第3因子の学習適応ではT1とT2ともに学年の主効果が有意であり、小学生>中学生であり、小学生の中でも3,4年生>5,6年生であった。このことより、仲間との関係を主にして学校適応をみるときには、小学校から中学校への移行はかなりスムーズに行われていることが推測された。これはマスコミなどで取り上げられている「中1ギャップ」現象に反する結果であった。しかし、その反面学習に目を向けると小学校でも学年が上がるにつれて、適応感は徐々に下降する傾向があった。
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