研究概要 |
本研究では,発達障害児を対象とした実行機能の評価方法を開発するための基礎的検討を行うことを目的とした。第一研究として,健常者を対象として語想起課題における実行機能の役割に関する検討を実施した。実行機能を反映する課題として語想起課題を用いた。語想起課題とは,ある共通属性を有する単語を限定された時間内で可能な限り多く再生するという長期記憶からの単語検索・産出課題である。本研究では語頭音手がかりによる語想起課題とした。第一研究では,日本語における語彙数の影響を確認するため,語彙数の多い語頭音と語彙数の少ない語頭音をそれぞれ2音ずつ選択した。総再生数と時間経過による再生率変動の2つを行動指標として取り上げた。生理指標として,事象関連電位P3成分(刺激提示後300ms前後で頭頂優位に頂点を形成する陽性成分)について測定した。研究代表者がこれまで用いてきた聴覚オドボール事態による手続きを採用した。分析の結果,語想起課題における時間経過により再生率変動と前頭部P3振幅との間に負の相関が認められた。このことから,再生率変動が前頭葉機能である実行機能をよりよく反映している可能性が示唆された。第二研究として,発達障害児を対象として語想起課題を実施した。また,第三的研究として,定型発達の小学校低学年児童を対象として語想起課題を実施した。いずれも総再生数と時間経過による再生率変動について分析した。発達障害児については,時間経過による再生率変動が全般的知能と関係していることが明らかとなった。定型発達の子どもにおいては,学年により時間経過による再生率変動のパタンが異なることが推察された。
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