研究課題/領域番号 |
17530474
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉村 和美 名古屋大学, 発達心理精神科学教育研究センター, 助教授 (20249288)
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研究分担者 |
溝上 慎一 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 助教授 (00283656)
水間 玲子 福島大学, 人間発達文化学類, 助教授 (80343268)
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キーワード | 青年期 / アイデンティティ / 自己 / 関係性 / 発達 / 教育系心理学 |
研究概要 |
本研究は、アイデンティティは自己と他者の関係の認識によって成り立つという関係性の観点に立ち、アイデンティティがどのようなメカニズムで形成・変容するのかを明らかにする。具体的には、以下の3点を目的とする。(1)近年の認知発達論を援用して、アイデンティティを、構造的特徴を持つ内的な抽象(abstraction)と見なし、関係性の観点から見たアイデンティティ形成・変容のメカニズムを解明する枠組みを構成する(研究1)。(2)短期の縦断研究により青年のアイデンティティの形成・変容過程を明らかにする(研究2)。(3)大学生に焦点を絞ってアイデンティティ形成・変容を促すための方法を検討し提言する(研究3)。本年度は研究代表者と分担者が議論を行って研究1を遂行し、以下のような成果を得た。 1.アイデンティティ形成・変容過程の中核は、その青年の自己に関する諸要素(例えば、特定の課題に関する自己の表象と他者の表象)を結びつけるしかた、具現化のしかたであると見なすことができる。この様式(モード)には、個人差、発達差がある。 2.自己に関する諸要素を結びつけたり具現化する際には、連続的な変化のみならず飛躍的な変化がある。近年の認知発達論(Fischerら、1980,2002など)はこの飛躍的変化をintercoordinationといった概念で説明しているが、自己・アイデンティティ形成に焦点を合わせるとその内実を、人生の重要な選択に対する意味づけの転換(杉村)、自己形成モードの構成(溝上)、バーバルな世界への同一化(水間)といった概念で説明できる。 3.アイデンティティ形成・変容過程を検討する場合、自己形成・変容過程との関連を整理する必要がある。具体的には、アイデンティティ形成・変容過程は、具体的な課題領域(職業、イデオロギーなど)において展開されるが、その基盤には特定の課題領域によらない自己形成・変容過程が継続的に展開している。
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