大学3年生の秋の時点で卒業後の進路について意思決定ができない人のうち、強い不安と領域を問わない優柔不断性の低いundecided型の未決定者を研究対象として、4種類の研究を行った。目的は、彼らに対する効果的な支援のあり方の検討と、それを通しての未決定者の理解である。 まず質問紙調査においては、"個性"や"自分らしさ"にこだわって進路を考える人ほど決定しにくいであろうとの予測の下に研究したが、「仕事における個性発揮」の因子は納得のいく決定と関連しているとの結果が得られた。それに対して「自己分析の先行」は未決定を促進する方向での関連を示した。ただし、これらの"個性"や"自分らしさ"にこだわる進路選択のあり方は、未決定やその関連の変数をあまり多くは説明していない。 続く面接調査では、彼らが「自分が働いている姿」が見えないゆえに決められないこと、あるいは探索行動よりは自分により合ったもののなかでベストなものを探そうとしている姿が事例として明らかになった。 研究3の対個人の支援では、個々の事例がもつ選択肢について論理的・合理的にやりとりをすること、調べてくる・考えてくるといった、職業情報探索を伴った課題を出してペースメイクすること、現実性を重視して進めることが効果をもつことが明らかになった。 研究4の対集団の支援では、彼らに選択肢を具体化させ、多面的に見直させることには成功した。しかし参加者が次回までに行う職業情報探索をうまくペースメイクできなかったために、新たな考えが身についたという感覚、もっと調べなければという危機感を持たせはしたが、実際に調べてきた職業情報をもとに選択肢を再吟味したり、意思決定に近づかせるといった、意思決定へのより実際的な接近にはあまり奏功できなかった。
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