前年度までに完成した空間的視点取得能力スクリーニング検査の検査結果と、生活の質(QOL)および他の検査指標との関連について明らかにすることが本年度の研究目的であった。健常者においては課題成績が天井効果を示し、明確な繋がりを示せないことがわかっていたため、脳卒中後遺症高齢者のみを対象とし、空間的視点取得能力スクリーニング検査の検査結果と、リハビリテーション現場における代表的な検査指標(改正長谷川式簡易知的機能検定スケール;HDS-Rならびに障害高齢者日常生活自立度;Jランク)、さらに医学的回復度との関連について検討した。研究協力者の支援のもとで、30名の入院・通院患者を対象として諸検査を実施した。その結果、従来の認知検査であるHDS-Rとの間には明確な関連が見られなかった。一方で、Jランクや医学的回復度との間に興味深い関連が見られた。急性期リハビリテーションにおいて実施されるプログラムの一種である「前もたれ端座位」の開始に伴って、認知機能が大きく改善することが示されたのである。認知機能の回復は、前もたれ端座位開始日の約3週間後に顕著となることも示唆された。さらに、重篤な身体障害により座位姿勢を取ることのできない患者にも、この検査は継続的に実施できることもわかった。これらの結果は、開発した新検査が、従来の検査にはない検出力を持つことを意味している。今後は、十分な数のデータで今回の結果を確かめること、身体重症度の極めて高い患者にも適用可能な手法の開発などが課題として残された。
|