研究概要 |
本研究は、研究代表者が以前考案した乳幼児用の空間認知能力検査課題(顔回転課題;渡部,2000)をベースに、ノートパソコン上で実施できる高齢者用の空間的視点取得能力スクリーニング検査の開発を目指すものであった。その際、認知症や脳卒中後遺症患者にまで適用範囲を広げることを視野に、検査の簡便化を目指してきた。こうした患者の認知度レベルの低下や障害の程度を知るために、臨床現場では高い信頼性と機能性を期待できる検査が求められているからである。試作した検査の臨床的有効性を検討し、あわせて後遺症・症状・病巣やリハビリテーション経過との関連を観察・分析して、患者の快復度を示す認知的スクリーニング検査としての課題の有効性について縦断的に検討した。9名の患者に1ヶ月間程度の継続的な課題実施に協力してもらったほか、比較群として大学生と健常高齢者各10名のデータも収集した。その結果、患者群において、リハビリテーションにおいて「前もたれ端座位」が可能となった時点から3週間の間に、運動・認知機能に関して劇的な改善が生じているとする可能性を示すことができた。これは、本検査がリハビリテーション・メニューの策定に役立つことを意味している。これらの結果は、国内外の心理学関連諸学会にて発表したほか、論文にまとめて国際誌に投稿した。今後の課題としては、十分な数のデータで今回の結果を確かめること、身体重症度の極めて高い患者にも適用可能な手法の開発などである。
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