研究概要 |
本年度は4年計画の初年度であり,以下の3点のような実施結果であった。まず,1.子どもの社会性育成を目的とした「社会性と情動の学習(SEL)プログラム」の開発を行った。すでに改定済みの小学校中学年用プログラムに続いて,本年度は小学校低・高学年用プログラムを改定した。なお,中学校用プログラムについてはまだ開発段階である。小学校の低・中・高学年用プログラムは,次の3つの領域の内,おもに領域Aを中心としたものである。(1)領域A : SELで育成を図ろうとする8つの能力のいずれかまたはいくつかを授業の一義的なねらいとする学習である。(2)領域B:学習の過程や背景においてSELが取り入れられている学習である(例:教科学習中の意見交流場面)。(3)領域C:学校生活場面でSELが実施されるものをいう(例:朝の会,当番の活動,休憩時間)。 次に,2.小学校でのSELプログラム導入に関しては,公立小学校1校において,研究推進役の教諭(研究協力者)を中心に,1年〜6年の全学年でのSELプログラム導入・実践を行った。約7ヶ月のプログラム実施後,プログラムを実施しない統制校との比較を行ったところ,一つの学年を除く全学年で,教師評定による社会性と情動に関する行動の変容が認められた。なお,児童の自己評定では明確な変化は見られなかった。授業実施頻度,研究推進役のコーディネーター教員の役割,そして家庭との連携について,今後の改善が必要であると考察された。 最後に,3.中学校でのSELプログラム試験導入について,上記の公立小学校卒業生が入学する公立中学校での実施は,学校側の都合により実施できなかった。そのため,他の中学校において部分的な試行に止まった。小中学校が連携して実施できる体制づくりが課題であると考えられる。
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