本年度は4年計画の3年度であり、以下の4点のような実施結果であった。 1 社会性と情動の学習(SEL)プログラム開発 前年度までに作成と一部改定を終えた小学生用SELプログラム(1〜6年生)と中学1・2年生用プログラムに続いて、今年度は新たに中学3年生用プログラムの原案作成を行った。 2 SELプログラム効果の個人差の検討 前年度の研究で、児童の社会性に関する当初の個人差によって、SELプログラムの学習効果が異なることが推測されたため、小学校5年生を対象に実験法により検討した。その結果、当初の社会性の自己評価が低い児童は、SELプログラム実施後に、社会性の教師評価の1部分についてのみ、好ましい方向での効果が確認された。なお、実施にあたって、保護者へのSEL学習のアピールおよび家庭での協力依頼の計画的な実施、道徳や特別活動と関連づけたエクササイズの計画、児童一人ひとりの社会性についての担任教師の目標設定などは、前年度と同様に実施した。 3 総合的な学習との関連づけ ボランティア学習への取組を一つの契機として、そこにSELプログラムを位置づけ、導入・実践・評価を行うやり方について、その試行を行った。小学校3年生を対象にした事例研究法による検討の結果、向社会性についての事前の教師評定をもとに低・中・高の3群に分けたところ、3ケ月の実施で、低群で好ましい得点の変化が認められる傾向が見られた。総合的な学習等での活用が、教師がSELプログラムの意義を意識化しやすい方法の一つである可能性が示された。 4 中学生用プログラムの試験的実施 中学校で、対人関係能力の育成をめざした学習と学校行事とを関連づけた試行を行い、効果測定の工夫や実施上の留意点等を確認した。
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