現行の著作権法の一部には、著作物には有形無形のものが含まれ、その加工、変形には原作者の了解が必要だという考えがある。本研究は、「成人の日常的認知を含めて、子どもにおいてこのような概念が自然発生的に生ずるのか、日常的認知は法律的概念とどのような違いがあるのか」を明かにすることを目的としている。この問題は、無形物の所有、公と私、自他、活動と活動の産物の帰属、オリジナルと変形の認知など、社会的認知発達上の重要概念と関わっている。本研究計画では、これらの概念を以下の3テーマに分け、幾つかの条件設定場面でのデータ収集・分析を行うことによって探究した。 1、有形/無形物の所有を比較し、発話の帰属方略との関係を検討した。 2、各種変数操作による有形/無形創作物について、創作活動と産物の関係を検討した。 3、オリジナルと変形の根拠と関係を検討した。 対象は幼児から成人までであり、方法は自然観察と半統制課題場面、インタビューであった。本年度のデータ分析はまだ終了していないが、現在までの結果は、 テーマ1については、幼児でも無形物の所有行動が有形物に劣らないことが示唆された。 テーマ2については、有形物としての描画について、創作活動に関わる自他の創作意志の異同が幼児においても区別されることを示唆する結果が得られた。 テーマ3については現在分析途中である。 平成18年度も引き続き、この3テーマについて、検討を進める予定で新たな研究計画を作成中である。
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