本研究では以下の3点について検討する目的で、文献研究を行い、幼児および成人の会話、描画描出場面について、半統制観察、自然観察を行った。著作物の変形の過程としては、発話の引用や描画の修正、描画に伴う発話の時制との関係などに焦点化し、著作物の変形に関する日常的認知を分析した。 1、有形/無形物の所有比較による、発話帰属方略の検討:幼児(4歳〜6歳)と成人3-5人の小集団が個室で課題を行う場面をビデオ観察した。課題は、所有形態が無形の場合(会話のみ、映像視聴)と有形の場合(描画活動)を用意し、そのときの言語・非言語相互行為を比較した。 2、有形/無形創作物についての各種変数操作による、創作活動と産物の関係の検討:対象者、データ収集方法、分析方法は1に準じ、変換操作を介在させた活動と産物の帰属を調べた。 3、オリジナルと変形の根拠と関係の検討:対象者、データ収集方法、分析方法は1に準じ、変換操作の変数(動作主の有無の関係など)の影響を比較し、変形の根拠をより明確にした。 当初の計画の発展として、子どもや大人が自ら映像制作という創造に関わることによって、映像対象や手段の意味づけに変化が予想されたことから、著作物の帰属の問題は、単に創作者と創作物の関係の問題だけではなく、メディアとしての著作物を利用する利用者のメディア・リテラシーの問題としても検討する必要があることに気づいた。その点から、著作権法の下位条項の各種概念と比較対照する試みを行い、さらに新しい研究構想を得て今後の研究課題の吟味と展望を行った。
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