研究概要 |
Cooper(1982)はメタ分析の過程を,(1)問題の定式化,(2)データの収集(文献の探索),(3)データの評価(文献のコーディング),(4)分析と解釈,(5)結果の報告,という5つの段階に分けて論じている。このうち,(4)および(5)の段階で重要な役割を担うのが効果量(effect size)である。複数の研究結果を統合して全体としての結論を明確に示す際にも,あるいは複数の研究の結論が食い違う場合にその原因を探求する際にも,効果量に基づく分析が行われる。欧米では検定の偏重に対する批判が早くからあって効果量概念に注意が向けられ,1980年頃以降のメタ分析の普及とともに効果量の報告が奨励されるに至った経緯があるが,日本では効果量に対する注目度が低く,その重要性があまり認識されていない。そこで,欧米で提案されている多様な効果量指標の特徴・長短をまとめ,日本の社会科学・心理学研究において効果量を報告する場合の問題点を考察した。 日本ではメタ分析の実践研究はあまり目につかず,そのこと自体がメタ分析の認知度が上がらない理由の一つのように思われる。そこで,欧米および日本におけるメタ分析利用の実態を調べた。米国心理学会の代表的なレビュー誌Psychological Bulletinを例にとると,メタ分析研究は1981年にはじめて発表されて後その割合を増し,1985年以降は少ない年でも10件,平均すると年間20件近いメタ分析論文が発表されている。これに対して「メタ分析」「メタアナリシス」などの語をキーワードとして日本語文献を検索したところ,社会科学・心理学領域のものは,解説テキストなどを含めても1990年以降あわせて30件に満たない状況で,日本におけるメタ分析実践研究がきわめて少ないことが明らかになった。
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