研究概要 |
問題意識を共有する複数の先行研究から得られた結果を統合しようとするメタ分析において,統合のための方法論の基礎となるのが,効果量(effect size)である。たとえば,独立な2群の平均値差に目を向ける研究では標準化平均値差(Cohenのδ),3群以上の平均値差が問題となる研究ではη^2やω^2,2値変数どうしの連関に注目する場合についてはオッズ比など,多様な効果量指標が提案されている。効果量の重要性に対する認識が広まりつつ欧米と比べ,日本では効果量指標が報告されることは稀で,文献のレビューにおいても,個々の研究で示された検定の結論がvote counting的に総括されて終わることが多い。その理由はいろいろと挙げられるが,そもそも効果量の概念があまり認知されていないこと,効果量の推定値とその信頼区間を報告しようと思ってもこれを計算するソフトウェアが乏しいことなどが,一因をなしていると考えられる。 そこで,今年度は,個々の研究において検定だけではなく効果量とその信頼区間を計算し報告することで得られるメリットを確認するとともに,多くの研究者にとって身近なExcelを使って簡単に効果量(標準化平均値差)と信頼区間を求めることのできるマクロを作成した。また,一言でメタ分析といってもさまざまな形態の研究が考えられるため,Journal of Educational Measurement誌を例に取り,心理学研究におけるメタ分析の実際(どんな目的意識に立っているのか,メタ分析のためにどんな統計的手法が用いられているか等)について,分析・整理を行った。
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