研究概要 |
社会科学・心理学研究では,同じ問題を扱っている複数の研究の結論が一貫せず,正反対の結果が報告されることもめずらしくない。問題意識を共有する複数の研究の結果を統合し,信頼性・一般性の高い結論を導くための方法論として,海外ではメタ分析(meta-analysis)の有用性・重要性が認識され,盛んに用いられている。しかし,日本の社会科学・心理学研究の領域においては,メタ分析の方法論が広く活用されているとは言い難い。メタ分析の手順は,(1)問題の定式化,(2)データの収集:文献の探索,(3)データの評価:文献のコーディング,(4)分析と解釈,(5)結果の報告,の5段階に整理することができるが,本研究では,とくに日本の研究者がメタ分析を実践する上で障壁になると考えられる,(2),(4)のステップに関する方法論を整理した。 (2)に関しては,参考文献・引用文献検索、論文の引用回数・著者索引,キーワードの抽出などのデータベース機能を駆使して,対象として選定されたテーマに関連する文献を,包括的かつ効率的に収集する手順を検討した。また,(4)に関しては,メタ分析の統計的方法の基礎となる効果量(effect size)に注目した。社会科学・心理学研究では,統計的仮説検定が偏重され,効果量に注目することが少ないが,効果量は検定では得られない,いくつもの長所を持っていることを論じ,日本の学会で報告された心理学研究について,その効果量の分布を示した。また,効果量やその信頼区間を簡単に求めるソフトウェアが乏しいこともメタ分析の普及を妨げていると考え,2群の平均値差に関する効果量Cohenのδを,その信頼区間とともに算出するExcelマクロを作成した。
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