研究概要 |
本研究の目的は、子どもが自己の感情をどのように認識し、それを制御するのかについて、その社会化プロセスを明らかにすることである。本年度は、研究1:子どもの感情制御を中心とした自己制御の測定(課題を与えて、子どもの行動を観察)と、研究2:親の養育態度と子どもの気質などの測定(調査)の本研究を実施した。 現在はデータの一部の分析が終了し、次のことが明らかになった。 1.感情制御の媒介要因:日本とアメリカの文化比較を行なった結果、日本の子どもはアメリカの子どもよりも感情理解課題の感情同定の得点が低く、実行機能課題のルリアのハンドゲームの得点が高かった。子どもの気質についても違いが認められ、日本の子どもはアメリカの子どもよりも、怒りやすさ・フラストレーションおよび接近が低く、なだまりやすさが高かった。日本の親はアメリカの親よりも、TASの得点が高かった(日本心理学会第71回大会にて発表)。2.感情制御課題(封筒課題)と子どもの気質・実行機能:感情制御課題(封筒課題:退屈な課題)と個人間要因について検討した結果、封筒課題の達成枚数が少ない群の気質の知覚的敏感性が高く、達成枚数が多い群の実行機能が高かった(日本発達心理学会第19回大会にて発表)。3.心の理論の文化比較:Wellmanらの心の理論課題のうち,知識へのアクセス課題と中身の誤信念課題で,日本の子どものほうがアメリカの子どもよりも得点が低かった(日本心理学会第71回大会,日本発達心理学会第19回大会にて発表)。今後はさらにデータの分析を進め、感情制御の社会化プロセスについて考察していく。
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