本年は、共分散構造分析の応用的研究に関して特段に重要な最新トピックとして3次までの積率を利用した積率構造分析の応用可能性に関して主として3つの研究を行った.1つは回帰分析に関して、3次の積率を利用するとどちらの変数からパスを引いたほうが適合が良くなるかという問題が解決されるために、因果の方向性に関して一定の知見が得られる性質をシミュレーションを通じて明らかにした.現実のデータに対しても適用を試み、パスの方向性に関して、多くの場合に納得のいく結果を得られた.2点目は因子分析法への適用を通じて3次以上の積率を利用すると因子負荷行列の回転の自由度がなくなる性質に関して調べた.母数が少ない場合のほうが不適解の発生確率も低く、因子相関を許すなど母数を多くすると解が不安定になることが判った.ただし現況のように誤差変数のない独立成分分析よりは緻密なモデルが構成できることが示された.この方法が普及すれば因子の回転という概念はなくなってしまうかもしれない.3点目は同時方程式のモデルの探索に関してである.通常、パス解析では可能なパスを全て引いてしまうと識別不定になってしまう.しかし3次の積率を許すと解を求めることが可能になるのでそこを出発点にして、不要なパスを1本ずつ消していくことができる.この過程を繰り返すと、ある時点でモデルとデータの適合が悪くなる事態が発生するので、その1つ手前のモデルを最終的なモデルとして採用することができる.以上の方法により、事前の実質科学的な知見ナシでパスモデルの探索が可能になる.
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