本年度は、研究目標に近づくための予備的段階として行われた。まず自問自答を「自分に関する問いを思い浮かべてそれについて答えを出そうとすること」と仮に定義し、自問自答を含む一連の体験を自問自答体験と定義した。次に、青年期における自問自答および自問自答体験の内容を概観するために、8名を参加者として半構造化面接調査を行った。 さらに、多様な表現として得られる自問の意味構造を明らかにするために、半構造化面接に基づいた自問および既存尺度の自問を参考にした自問文のリストを作成し、4年制大学の学部生363名を参加者として自問の頻度を質問紙によって調査した。頻度にもとづいた因子分析の結果、対人関係時に得られる自問、自己否定時に得られる自問、将来のことを考える時に得られる自問、自己の実存に関する自問の4因子構造が見られた。 最後に、青年期における自問自答が当事者にもたらす意味について明らかにするために、当初の半構造化面接の参加者6名に再度半構造化面接を繰り返した。その結果、以下の3点が全体的な傾向として示唆された。(1)時間経過あるいは参加者が置かれている状況の変化に応じてそれまで当事者が考えていた自問自答体験が意識されなくなる場合がある。(2)反語的な自問自答や自己否定的な自問自答には、実際の何らかの試行錯誤行動へと動機づけるような働きがある。(3)そのような試行錯誤および参加者が置かれている状況の変化によって、新たな情報が獲得され、それによって曖昧だった自問自答が明確化し、さらなる何らかの行動に結びつく。
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