研究概要 |
本研究は,まず自問自答を理論的検討し,その知見に基づいてその内実を実証的に解明したものである。前者の理論的位置づけは,国内外の研究知見に基づきながら,1.何故に,いま,自問自答か,2.自問自答の内実,3.自問自答の機序,4.自問自答研究の枠組,のそれぞれを明らかにし,自問自答心理学の研究領域を新たに開拓し,確立したものである。 また,後者の実証的研究は半構造化面接と質問紙による調査からなる。まず,調査1では,面接および質問紙調査によって大学生が日頃どのような自問自答を繰り返しているのか,その項目を収集し,それに基づいてタイプ分けを行った。次に,調査2では,その項目に対する頻度を評定させ,その因子分析から4要因を抽出し,その内実を明らかにしたものである。さらに調査3では,6名の大学院生に対して半構造化面接を行い,同一院生に1年を経過した後,再度同様の面接を行い,1年前の自問自答の解釈,自問自答の変容,解決策から彼(女)等が,自問自答を介してどのように自己を再構築しているのかを明らかにしたものである。また,同時に,これらの調査を介して,自問自答テストを開発するに必要な基礎データを収集したのである。さらに,自問自答の核をなすものが無意図的想起であり,自伝的記憶である事実に着目し,その認知的機序を解明するためのモデルを構築した。 最後に,本研究を通して得られた知見に基づいて,また国内外の研究成果を参考にして,自問自答の研究の進むべき方向を論じた。
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