研究概要 |
日本語における文法理解の生涯発達過程を示し、言語に障害のある高次脳機能障害児・者の文法理解力を評価するための日本語版文法理解テスト(J. COSS ; JWU, Japanese Test for Comprehension of Syntax and Semantics)を1997年より開発している。このテストを用いて、幼児から高齢者を対象に文法理解力を調査し、日本語文法理解の生涯発達過程を報告した(発達心理学研究,2005;高次脳機能障害研究,2005)。この生涯発達過程をもとに、言語発達遅児や発達障害児、失語症者、高齢者などの高次脳機能障害児・者を対象に文法理解力を評価し、障害領域の特定と障害の特異性を検討した。その結果、(1)後期高齢者では加齢による助詞関連項目の低下が認められたことから、助詞に焦点をあてた支援課題を実施し、認知機能の低下防止と文法能力の向上が認められた(高次脳機能障害研究,2007)。また、認知症防止を狙った和紙ちぎり絵課題を実施し、自発性やコミュニケーション能力の促進が認められた(東海女子大学紀要,2007)。(2)言語発達遅滞児では、文法理解力の全般的な遅滞が認められた。(3)広汎性発達障害児では授受関係の理解に困難が認められたことから、誤反応を分析し、正答に至るまでを能動文から受動文理解まで数段階にわけ、スモールステップの原理を用いた教育的支援策を実施し、授受関係理解の促進と、日常生活への般化が確認された(『広汎性発達障害児における文法理解の評価と支援』,投稿中)。このように、J.COSSを用いて、文法理解の生涯発達過程と平均獲得時期という言語発達水準の指標を示すとともにもとに、高次脳機能障害児・者の文法理解力の評価とその支援を個別に対応している。また、J.COSSのホームページを開設し、希望者にJ.COSS日本語文法理解テストを無料で配布しており、テストと支援課題を統括したソフトウェアを現在開発中である。
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