本研究の目的は、幼児の自己主張性と仲間関係における交代制ルールの関連を明らかにすることであった。 本年度は、まず自己主張性と集団遊びや一人遊びなど社会的遊びに関する嗜好との関連を検討することを第一の目的とした。幼稚園の3歳児30名、4歳児56名と5歳児58名を対象に個別調査を行った。まず、幼児が日常生活で遭遇しやすい仲間との葛藤場面を絵で示し、その場面で自己主張するかをたずねて、自己主張性を測定した。次に、4種類の遊びを好きな順に並べさせて遊びの嗜好を調査した。自己主張性と遊びの嗜好の関連を検討した結果、自己主張能力の高い幼児はおにごっこ遊びを好み、低い幼児はなわとび遊びを好んでおり、自己主張能力の高い幼児が集団遊びを好む傾向が一部示された。このことから、対人能力の発達が集団遊びの経験と関連があることが示唆された。この結果を九州心理学会第66回大会で発表し、大分県立芸術文化短期大学研究紀要にまとめた。 次に、自己主張性と交代性ルールの共有過程との関連を検討することを第二の目的とした。上記の被験者の中から自己主張性の高い者同士、低い者同士の三人組を構成し、実際に魚釣りゲームで遊んでもらった。三人に1本しかない竿の使用についての交代制ルールを検討した。その結果、主張性高群では自分の順番を主張する待機者主導交代が多く、主張性低群では相手を配慮した実行者主導交代が多かった。また、援助行動は主張性低群の方が多かった。主張性低群は高群に比べて、相手を配慮した相互作用を行うことが示された。しかし、主張性高群の方が必ずしも順番を多く主張して規準の明確なスムーズな交代を行っているとは限らなかった。本研究では組分けが主張性高同士、低同士の為、低群もある程度主張できたと考えられる。今後、交代制ルールの共有過程を詳細に検討する必要がある。この結果を日本発達心理学会第17回大会で発表した。
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