研究概要 |
研究1-1(H.17年度予定の研究の追加調査) 既に昨年度の成果報告書において報告した関東・東北地方605名のデータに加え,最終的に2010名の高校1〜3年生男女に自記式能動的・反応的攻撃性尺度を実施し,データを収集・分析を終了した.探索的因子分析の結果,中学生と同じ6因子構造が得られ,各下位尺度のα係数は.64〜.88と前年度報告よりも改善された.また,共分散構造分析による高次因子分析の結果,従来の能動的攻撃性-反応的攻撃性の2因子モデルよりも,反応的攻撃性(報復意図,怒り),人志向的能動的攻撃性(仲間支配欲求,攻撃有能感),物志向的能動的攻撃性(欲求固執,攻撃肯定評価)の斜交3因子モデルの適合度が最も高いことが判明.全データ中の588名からは,報告済みの敵意攻撃インベントリー以外に非行接近尺度(自己中心性),多次元共感性尺度(共感的関心,気持ちの想像),自己表明尺度(肯定的自己表明)を収集でき,反応的攻撃性各下位尺度とは敵意と苛立ちに中程度の相関が、能動的攻撃性下位尺度には自己中心性と共感的関心の低さに中程度の相関が見られ,尺度の弁別的妥当性が確認された. 研究1-3 昨年度末の時点では項目分析までが終了していたが,今年度は引き続き成人用能動的・反応的攻撃性尺度構成の分析を行った.大学生・一般社会人215名のデータを分析した結果,反応的攻撃性(報復意図,怒りの持続・易怒性),能動的攻撃性(他者支配欲求,攻撃有能感,欲求固執,攻撃肯定評価)に該当する因子が発見され,ほぼ満足な信頼性が得られた. 研究2-1 中高生の能動的・反応的攻撃性と心理社会的適応との関連 心理社会的適応の変数としてゆるし傾向性を取り上げ,中学1〜高校3年生553名対象に調査を実施.中高生とも反応的攻撃性は,他者へのゆるし傾向性と中程度から高い負の相関が認められた. 研究2-2攻撃的行動傾向との関連 高校1〜3年生1,296名対象に自記式能動的攻撃・反応的攻撃性尺度と敵意攻撃インベントリーの身体的攻撃,言語的攻撃下位尺度ならびに桜井(2003)の関係性攻撃性尺度実施.共分散構造分析の結果,関係性攻撃は反応的攻撃性,2つの能動的攻撃性(人志向的・物指向的)いずれも関連するが,身体的攻撃には特に物指向的攻撃性の関連が強いことが明らかにされた.社会的情報処理の媒介的機能については現在分析中である.
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