研究概要 |
中学生用PDI全30項目(30点)のうち、PDI合計得点の平均は約5.7点(19.0%)であった。尺度が先行研究と異なるので単純比較はできないが、成人にくらべると体験率はやや低い。中学生全体では女子のほうが男子よりもPDI得点が高い(t(261)=2.002,p<.05)。また、学年ごとのPDI合計得点平均は、1年生は約3、8点(12.7%)、2年生は約6.9点(23.0%)、3年生は約6.1点(20.3%)となり、1年生と2年生との間で得点が有意に高まることがわかった。 中学生全体として、PDI合計得点と攻撃性得点の間には有意な偏相関は見られなかったが、攻撃性尺度の下位尺度である身体的攻撃得点、言語的攻撃得点、短気得点を統制し、PDI合計得点と敵意得点の偏相関分析を行ったところ、中学生全体として有意な正の偏相関が見られた(r=.34,p<.01)。学校関係者の感想として、「見た目は大人しく真面目な生徒で、PDI得点や攻撃性得点が高い生徒が何人かいて、意外である」「PDI得点が高い生徒で、人と関わることができない者がいる」という報告があった。 日本語版PDIに基づく大学生の妄想的観念体験率は27%であり、先行研究であるPeters, et. al.(1999)とほぼ同じ結果が得られた。また、妄想的観念と対人不信感との間に有意な偏相関が認められた。攻撃性に関しては、中学生と同様に「敵意」のみと有意な相関が認められた。さらに、大学生を被験者としてベイズ理論に基づく推論実験を行った場合、情報収集の自由度を低い条件から高い条件に変化させると、妄想的観念尺度の高得点者は他の被験者・他の条件よりも有意に情報収集量が低下することがわかった。つまり、妄想的観念に特徴的な「結論への飛躍」とよばれる推論バイアスは、健常大学生の場合、実験条件によって顕在化する認知特徴であることがわかった。
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