研究課題
基盤研究(C)
今回の研究では、高機能広汎性発達障害(以下HFPDD)児者の自己意識を一貫性・能動性・共有性の3側面から検討することを目的とする。対象児者は医学的診断の確定しているHFPDD児29名(6〜15才)、HFPDD者17名(16〜40才)の計46名(男女比2.5:1)、以下の心理検査を個別に実施する。ウェクウラー知能検査(WISC-III・WAIS-III):自己意識の中核にある一貫した自己の存在(一貫性)を検討する。○△□物語法(想像性の発達段階)と人物画法(不器用さ):自己意識がもつ外界に対する自発的な情報操作・制御(能動性)を検討する。絵画投影法(CAT・TAT):自己意識の成熟に必要な他者との情緒的な関係性(共有性)を検討する。同時に、自己意識の形成過程に関する半構造化面接も実施する。その結果、ウェクスラー知能検査の平均では、言語性IQ=101.3(最低74)、動作性IQ=93.4、全体IQ=97.4(71-125の範囲)となり、知的障害の合併は認められなかった。それぞれの結果を検討した上で、HFPDD児者の自己意識の3側面について、次のような独特な特徴が明確になった。(1)一貫性:環境からの視-知覚・運動系の情報処理が混乱しやすく、動作性項目間の差異を精査することが重要となる。こうした混乱を予防するため、10才までの環境調整を含めた早期の対応が重要となる。(2)能動性:想像性のように柔軟に体験を統合・整理する臨機応変さ(外界への器用さ)が成人になっても形成されにくいために、情報を整理する補助的役割としてのソシャル・スキル・トレーニングの活用が大切になる。(3)共有性:あいまいな状況の下では、年令やIQの高低に関係なく、視覚的・主観的反応が顕著になりやすく、また過去の外傷的体験が賦活されやすい。そのために、長期間にわたり関わることが可能な専門家の存在が不可欠である。最後に、HFPDD児者として「自分らしさ」を大切にした生き方について示唆した。
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