平成17年度は、山形県内の1児童養護施設において、日本版CBCLと日本版ADHD-RSを用いた調査を行い、35名分のデータを収集した。研究計画書の段階では、4施設を予定していたが、追加採択であったために、3施設での実施は年度内に間に合わなかった。来年度に3施設に施行し、4施設分をまとめてデータ解析する予定である。 各施設で行われている心理ケアの内容と課題については、山形県内の2施設と山梨県内の2施設について、心理療法担当職員もしくはファミリーケースワーカーから状況を電話等で聴取した。山形県内の1施設については、直接、施設に出向き、上述の質問紙調査を施設長と心理療法担当職員・ファミリーケースワーカーから状況を詳細に聴取した。心理療法担当職員の配置状況については、各県の児童相談所に問い合わせて把握した。山形県内では、5つある児童養護施設のうち、3施設に心理療法担当職員が配置されていたが、いずれも非常勤であった。3施設とも心理療法担当職員に対するスーパービジョンを施設側の費用負担で施行していた。山梨県内では、5つある児童養護施設のうち、2施設に常勤の心理療法担当職員が配置されていた。しかし、スーパービジョンについては、施設ではなく、個人負担で受けていた。 これらの施設で共通して直面しているのは、虐待やネグレクトを理由にして措置されるケースが増えて、発達や行動上の問題を抱えている子どもたちへの対応の難しさであった。また、心理療法担当職員やファミリーケースワーカーが配置されても、生活全体をケアしている指導員や保育士などのケアワーカーとの連携のあり方が問われていることが明確になった。役割分担の難しさ、治療場面と生活場面のギャップ、情報共有をどこまで行うか、家族との面接のあり方など、多様な問題が浮き彫りになった。
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