平成17年12月から19年10月にかけて山形県内の1つの児童養護施設を対象として、児童養護施設における心理ケアのあり方や心理療法のプロセスについて当該施設の心理療法担当者やファミリー・ケース・ワーカーに面接調査を行った。また、平成18年1月から19年3月にかけて、山形県内と山梨県内の児童養護施設合計3施設のケア担当職員を調査対象として、担当している児童(138名)について日本版CBCLやADHD-RS-IV-Jなどの質問紙調査を実施した。 面接調査の結果、児童養護施設における心理ケアにあたり、生活面のケアを担当している職員と心理療法を担当している職員、ファミリー・ケースワーカー、管理職、嘱託医が子どもの心理の理解や心理ケアの方針を共有するために、定期的な事例検討会と心理療法のスーパービジョンを行うことが重要であることが示された。また、心理療法のプロセスにおいては、「退行」「外傷体験の再演」「試し行動」「死と再生のテーマ」「生きる意味への問い」などの共通する要素があることが示された。 質問紙調査の結果、児童養護施設に入所中の子どもたちは、ルールを守らない行動や攻撃的行動、対人関係上の問題を示す子どもが多く、注意欠陥/多動性障害に近い行動傾向を持つ子どもも多い可能性が示された。精神科で薬物療法を受けている子どもは9.4%で、施設内や外部機関で心理療法を受けている子どもは32.6%であった。 以上の結果から、児童養護施設入所中の子どもたちは、様々なメンタル・ヘルス上の問題を持っており、心理療法などの介入の必要性も高いことが示された。そして、児童養護施設に入所中の子どもたちに対する心理ケアにおいては、外傷体験や発達上の問題についての理解が重要であり、生活ケアと専門的な心理ケアのコラボレーションが求められることが示唆された。
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