ハイリスク児では乳児期からの発達支援、家族支援が重要である。ハイリスク児の乳児期から学齢期までの長期追跡を行って複数の臨床心理査定結果から、幼児期、学齢期の認知機能・言語機能の解明を行った。また、軽度発達障害の早期発見の方策も検討した。その結果、幼児期前期では精神発達が順調であっても言語機能における抽象化や推論の遅れが示唆された。この場合には視覚情報の推論過程の影響が考えられた。また、幼児期前期から幼児期後期にかけては言語機能および視知覚の統合機能における伸びがみられた。幼児期後期の認知機能においては、言語領域が比較的早く形成されているのに対して言語機能と知覚機能との統合がそれ以降におこなわれると示唆された。幼児期後期の認知機能に寄与する諸要因を多変量解析した結果、出生体重や周産期のリスク要因の影響は低かった。心理査定の相互の関連を分析した結果、知能検査では認知機能、言語機能を把握しているのに対して人物画検査では描画能力と情緒的特徴を把握していた。また、幼児期から学齢期にかけての認知機能・言語機能の変化は少なかった。軽度発達障害の早期発見のためには1歳までのコミュニケーション行動や象徴機能の特徴に気づくことが重要であり、それ以降の動作模倣や言語獲得の経過、および幼児期前期の心理査定における発達検査項目の種類と実施年齢の結果によって早期発達支援の方略を考えた対応が必要である。縦断的知見にもとついた今後の検討が必要である。
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