研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、(1)大学生の孫とその祖父母の世代間交流がどのように行われているのかを把握し、(2)祖父母と孫の世代間交流を促す回想法の開発を試み、その効果を検討することである。(1)祖父母と孫の世代間交流については、大学生を対象とした質問紙調査(N=278)を行い、世代間交流と自我同一性、基本的信頼感の関連を検討した。その結果、世代間交流尺度では、5つの因子(安全基地、干渉・期待への負担感、成長の見守り、時間的展望促進、世代継承性の確認)を抽出し、尺度の有用性が確認された。大学生の祖父母との世代間交流は「成長の見守り」「時間的展望促進」「世代継承性の確認」の得点が高く、肯定的であるが間接的な交流が多い。また、自我同一性・基本的信頼感との関連では、「干渉・期待への負担感」は弱い負の相関が認められ、「成長の見守り」では弱い正の相関が認められた。(2)「祖父母と孫の回想法」については、研究協力者9組18名(祖父母9名と孫である大学生9名)に「祖父母の孫の回想法」を行ってもらい、その効果を検討した。その結果、回想法を行うことで心身の不調を訴える協力者はなかった。祖父母のPGCモラール・スケール、孫の自我同一性尺度では、実施前後の得点に有意差は認められなかった。しかし、祖父母のバウムテストと自由記述、孫の自由記述の分析からは、回想法が、祖父母にとっては、自尊心の向上、ライフレビューの機会、世代継承の感覚などと関連し、孫にとっては、親密性の感覚、ライフレビューの機会、時間的展望などと関連する可能性が示された。
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