研究概要 |
本研究では,1.両眼捕捉現象に関する実験研究を行った.われわれは,両眼捕捉現象とは両眼刺激とともに提示された単眼刺激の視方向は両眼刺激のそれと同じように変化することを確認した.両眼捕捉現象には両眼刺激の特性(両眼刺激の密度,両眼刺激の幅)が重要な要因であり,単眼刺激の特性(幅)は影響がなかった.(Vision Research, 2005).またわれわれは,2.奥行き起因運動に関する実験研究を行った.両眼捕捉現象が生じるような刺激で融合を保ちながら,側方に頭部を動かすと単眼刺激が動いて見える.この単眼刺激の運動は奥行き起因運動現象の一種と考えられる.本研究で被験者は,単眼刺激の運動量と見かけの奥行きを報告した.その結果,単眼刺激の運動量と奥行き量はほぼ幾何学と一致しており,両者には高い相関があった.これらの結果は,現象的幾何学および,頭部中心視方向という概念で説明できる.このような議論はVision Research(2007)誌上に発表した.同結果は日本心理学会(2006)でも発表している.さらにわれわれは,3)単眼刺激の距離知覚に関する研究,特に単眼刺激と同時に提示された刺激の距離定位に関する研究も行い,遮蔽手がかりは距離の量的手がかりというよりむしろ順序手がかりであることを示唆する結果を得た.その結果はVision(2006)誌に発表した.これらに加え,われわれは4)両眼立体視と頭部運動に関する実験的研究(知覚コロキウム,2008),歴史的研究(Vision, 2007)も行った.
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