研究概要 |
過去経験もしくはその影響は、行動分析では、行動履歴、履歴効果、スケジュール歴、条件づけ歴、などと呼ばれているが、研究はまだ萌芽的な段階で、組織的な知見の蓄積もない。本研究は、行動履歴効果の研究のために、1つの概念的な枠組みを提供しようというものである。本研究代表者は、これまでに実施したいくつかの実験に基づき、履歴効果が刺激般化するという証拠を得た。ただし、これらの知見はすべて直前履歴効果に限定されたものである。本研究は、履歴効果の刺激般化が遠隔履歴効果にも認められるかどうかを明らかにするものである。本年度は、Freeman&Lattal型実験によって、遠隔履歴効果の先行刺激般化を検討した。モニター中央に縦5mm横25mmまたは縦5mm横13mmの黒い長方形を含む直径55mmの白い円を呈示し、この円への反応をFRまたはDRLスケジュールで強化し、刺激間での反応率の分化を確立した(履歴の確立)。このとき、長方形の長さと強化スケジュールの組み合わせは被験者間で相殺した(長-FR,短-DRLもしくは短-FR,長-DRL)。次に、どちらの刺激の下でもFR1スケジュールを呈示し、2つの先行刺激(長い長方形と短い長方形)間の反応率に差がなくなるまで続けた(履歴効果の消失)。最後に、FIスケジュールの下、長方形の横の長さが7mmから3mm刻みで40mmまでの12刺激(訓練刺激である横25mmならびに13mmの長方形を含む)のそれぞれを、ランダムな順番で継時的に呈示した(遠隔履歴効果の般化テスト)。短期間ではあったが、かつてFRスケジュールと相関のあった長方形に長さが近い刺激であるほどFI反応率が高く、かつてDRLスケジュールと相関のあった長方形に長さが近い刺激であるほどFI反応率が低いという刺激般化勾配が観察された。
|