本研究の目的は、スポーツ心理物理学の研究対象・方法論を発展させ、(1)スポーツ選手の身体運動を複数の光点で表現した刺激(以下、バイオロジカル・モーション刺激)に対する認知特性の検討、(2)視標追従中の反応時間の測定、を行うことである。 本年度は、(1)に関しては空手道選手のバイオロジカル・モーション刺激を作成した。1394高速カメラセットとデジタイズプログラム(ともにディケィエイチ社製)を用いて、空手道選手の突きや蹴りのビデオ映像をデジタイズし、頭や関節など主要身体部分のみを光点で表現した映像を作成した。この映像に関して空手道選手からは空手道の動きを良く表現しているという内観は得られているが、来年度はより厳密な評価実験と知覚実験を行う予定である。 (2)に関しては、視標の運動速度[0゜/秒(静止)〜40゜/秒]及び目標刺激の網膜偏心度[視角0゜視標位置)〜15゜]を操作して反応時間を測定した。その結果、視標の運動速度に関わらず、反応時間は網膜偏心度が大きくなるほど長くなるV字形を示すこと、視標運動速度が5゜/秒から10゜/秒と速くなると反応時間が急に遅くなること、が分かった。後者の原因に関して、網膜誤差と注意の観点から更なる実験を来年度に行う予定である。 以上の成果については、日本心理学会(東京、平成17年9月)、国際心理物理学会(トラバース、平成17年10月)、心理計量学会(トロント、平成17年年11月)、電子情報通信学会HIP研究会(仙台、平成15年12月)で発表した。
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