研究概要 |
本年度は,ハトを被験体として,昨年度に確認した,他個体と餌場を共有することにより,その餌場の主観的価値が低下する社会割引の過程を前提に,共有個体数次元への感度を同時選択手続きにもとついて調べた実験(実験3)と,共有餌場と独占餌場からなる実験箱(八角型実験装置)を用い,ゲーム理論の枠組みから個体間の社会的相互作用を調べた実験(実験4)を行った.まず,前者の実験では,片方の餌場には1個体が,他方の餌場には1個体から4個体までの4条件の個体を配置した条件の下,ハトの選択行動を調べたところ,ハトの選択行動は,共有個体数の増加ともに,1個体側の餌場への選好が増加することが認められた.この選好は,一般対応法則によりうまく記述することができ,共有個体数次元に対する高い感度が明らかとなった.実験4では,八角型実験装置を用いて,自己だけで摂食できる独占餌場と,他個体と一緒に摂食する共有餌場を設け,社会的相互作用の分析を試みた.ジレンマ事態として「囚人のジレンマ」と「チキン」ゲームを,方略として「ランダム」と「しっぺ返し」を用い,コンピュータと対戦する統制条件とともに,実験者の統制下にあるサクラ個体と対戦する実験群を設けた.現在,実験が進行中であり,結論的なことはいえないが,方略の効果よりもジレンマ事態の効果の方が大きいこと,ジレンマ事態の相違により選択が影響されること,サクラ個体との対戦は明らかにコンピュータ対戦とは異なることなどが示唆された. これらの結果は,本研究の手続きが社会的相互作用の分析に有効であることを示唆している.
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