本年度は、ハトを被験体として、一昨年度に確認した社会割引の過程を前提に、共有個体数次元への感度を同時選択手続きにもとづいて調べた実験(実験5)と、共有餌場と独占餌場からなる実験箱(八角型実験装置)を用い、ゲーム理論の枠組みから個体間の社会的相互作用を調べた実験(実験6)を行った.まず、前者の実験では、片方の餌場には1個体が、他方の餌場には1個体から4個体までの4条件の個体を配置し、報酬量を餌ペレット7個と10個とした条件で、ハトの選択行動を調べたところ、昨年度の結果と同様にハトの選択行動は、一般対応法則によりうまく記述することができた.また、報酬量が多くなると、一般対応法則にもとづいて当てはめられた直線の傾きが緩やかになることが認められた.実験6では、八角型実験装置を用いて、自己だけで摂食できる独占餌場と、他個体と一緒に摂食する共有餌場を設け、社会的相互作用の分析を試みた.ジレンマ事態として「囚人のジレンマ」と「チキン」ゲームを、方略として「ランダム」と「しっぺ返し」を用い、コンピュータと対戦する統制条件とともに、実験者の統制下にあるサクラ個体と対戦する実験群を設けた.その結果、共有選択の割合は、これまでの実験と同様に、チキンゲームの方が囚人のジレンマゲームより多く、社会的順位の低い対戦相手の方が、社会的順の高い対戦相手より多いことが確認された.また、対戦相手の方略の効果については、共有選択の割合は、しっぺ返し方略の方が、ランダム方略より多いことが認められた.これらの結果は、本研究の手続きが社会的相互作用の分析に有効であることを示唆する.
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