今年度は、事象関連電位(ERP)に関する基礎実験と本実験を行った。実験には心身とも健康な4名の男女大学生(20.6±2.4歳)が参加し、実験の目的・概要について説明のうえ文書による同意を得た。基礎実験では、ERPの刺激提示の検討を実施した。文献的には視覚・聴覚のどちらも刺激提示方法として可能であるが、実際に入眠を生じた場合に視覚刺激ではERP測定が困難となるため、聴覚刺激を採用した。オドボール課題は、4種類の500Hz、800Hz、1KHz、2KHzのトーンバースト音を用い持続時間100m秒で、それぞれ40回ずつ提示し、このうち2KHz音を標的、他を非標的課題とする刺激系を採用した。実験手順では、MSLT(反復性睡眠潜時テスト)を先に行い眠気を一部でもとってしまうとERPに影響する可能性が否定できず、ERPを先に実験施行することにした。その結果、1セッションは脳波装着、自覚評価測定、ERP測定、MSLT測定の順に行うこととし、9時に入室後、10時、12時、14時、16時、18時の合計5回実施した。睡眠統制については、5〜7日前に実験室に来室してもらい、睡眠日誌と同時にアクチグラフによる睡眠覚醒リズムを実験終了まで記録してもらい確認した。結果は、現在DL(通常光の室内500ルクス以下)条件のデータを解析中であるが、自覚的眠気評価ではVAS(視覚的アナログ評価)で、2時〜4時に覚醒度の低下、眠気の上昇が認められ、客観的眠気評価ではMSLTのスコアの低下が認められた。オドボール課題では、この時間帯にミス、遂行速度の低下は認められなかった。ERPでは、P300を主とした潜時と振幅の大きさを計測・検討中である。個人差も考慮する必要があるが、2時〜4時の時間帯に振幅の大きさが低下する傾向があり、注意力のサーカデイアンリズムによる変化があると思われる。次年度被験者を増やしながら、P300を主とした注意力のサーカデイアンリズムによる変化およびBL(2500ルクス以上の高照度光)照射条件についても検討する予定である。
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